多属性意思決定法による意思決定

意思決定は日常生活から重要なビジネス判断まで、私たちの生活のあらゆる場面で行われる。その中で、より合理的な選択を行うための理論として、「多属性意思決定法」が注目されている。

多属性意思決定法とは

現実世界の意思決定では、単一の要素だけでなく、複数の属性を考慮する必要があることが多々ある。そこで登場するのが「多属性意思決定法」の手法だ。この方法では、対象に含まれる複数の要素にそれぞれ点数をつけ、総合点が最も高い選択肢を選ぶ。

例えば、パソコンを購入する際の意思決定を考えてみよう。価格だけでなく、デザイン、ブランドイメージ、スペック、メーカーサポートなど、様々な要素を考慮する必要がある。それぞれの要素に1~5点の点数をつけ、総合点を計算してみる。

X社のパソコン:
価格(5点)、デザイン(1点)、ブランド(3点)、スペック(3点)、サポート(3点)
総合点:15点

Y社のパソコン:
価格(1点)、デザイン(5点)、ブランド(5点)、スペック(1点)、サポート(1点)
総合点:13点

この場合、総合点が高いX社のパソコンを選択することが、多属性意思決定の観点からは合理的だと言える。

理論の限界:現実世界での適用

多属性意思決定法は、理想的な状況下では非常に有効な意思決定ツールだ。しかし、現実世界では、これらの理論をそのまま適用することが難しい場合も多々ある。その理由として、以下の点が挙げられる。

  • 完全な情報の欠如:すべての選択肢や確率を正確に把握することは困難
  • 計算の複雑さ:多数の要素や選択肢がある場合、計算が煩雑になる
  • 主観性:効用や各属性の重要度は個人によって異なる
  • 時間的制約:緊急を要する決定では、詳細な分析が困難

これらの限界を踏まえ、現実の意思決定では「限定合理性」と「満足化原理」という概念が重要になってくる。限定合理性とは、人間の認知能力や利用可能な情報に制限があることを前提とした考え方だ。満足化原理は、最適解ではなく、ある程度満足できる解を求める方法を指す。