人間の集団と仲間外れ 心理学からの視点

人間社会では、古くから大きな集団を形成し、その集団に属さない人を仲間外れにしたり、いじめたりする傾向がある。これは現代でも深刻な問題だ。

人間が集団を形成する主な理由の一つは、生存のためだ。太古の昔、集団行動は食料の確保や敵からの防衛に有利だった。現代でも人々は集団に属したがる傾向があり、それが安心感につながっている。

しかし、集団形成には負の側面もある。「内集団」と「外集団」という区別が生まれ、外集団に対する偏見や差別が生じやすくなる。これは「社会的アイデンティティ理論」と呼ばれ、自集団を肯定的に、他集団を否定的に評価する傾向を指す。

集団のリーダーは、この心理を巧みに利用する。人々の「承認欲求」や「安全欲求」を活用して、自身の権力を強化しようとする。リーダーは「我々は正しい」「我々は優れている」という考えを広めることで、集団の結束を図る。

他集団を攻撃する行動の背景には、実は自信の欠如があるかもしれない。何かに依存しないと生きられないと感じる人々は、強固な集団の一員になることで安心感を得ようとする。そういった人々にとって、集団への所属は自己定義の重要な要素となる。

集団外の人々へのいじめは、こうした心理から生まれる。いじめは集団の結束を強め、自集団の優越感を高める。いじめの対象となる人々は、集団の規範や価値観と異なると見なされ、その「違い」がいじめを正当化する口実として利用される。

これらの問題を解決するには、多様性の価値を理解し、独自の思考力を育成することが重要だ。また、個人の自尊心や自己効力感を高めることで、不健全な集団依存を軽減することができる。